大判例

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広島高等裁判所 昭和26年(ネ)225号 判決

控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は、被控訴人において、被控訴人一家は本件農地を自作しなければ生計が立たない旨主張し、控訴代理人において、右主張事実を否認し、本件農地が被控訴人所有名義であることを認め、補助参加人において、補助参加人は本件農地の小作人であるから、本訴訟の結果について利害関係を有する旨述べたほか、原判決事実摘示と同一であるからここにこれを引用する(立証省略)。

三、理  由

控訴人は、本案前の抗弁として、被控訴人主張の本件農地の賃貸借契約における賃貸人は訴外鈴木他人であつて、同訴外人が該契約の更新拒絶許可の申請をし、控訴人のこれに対する不許可処分もまた同訴外人に対しなされたものであるから、被控訴人は右不許可処分の取消を求める本訴訟の当事者適格を欠く旨主張する。しかし、成立に争いのない甲第三号証、乙第一号証に原審証人鈴木他人の証言及び原審における被控訴人の供述を綜合すると、本件農地は被控訴人の所有であつて、しかも被控訴人がこれを所有するに至つたのはその父亡鈴木庄之助からの相続に因るものであること、訴外鈴木他人は被控訴人の同居の夫であつて、被控訴人夫婦は本件農地の返還を受け、これを将来ともに自作しようとするものなることが認められ、他に特段の事由がないから、右賃貸借契約における賃貸人、該契約更新拒絶許可申請人、同申請に対する控訴人の不許可処分が前記訴外人に対しなされたとしても、被控訴人は右不許可処分の取消を求める訴の利益を有し、本訴訟における当事者適格を有するものとするを相当とする。故に、控訴人の右抗弁は理由がない。

次に、本案について按ずるに、昭和二十四年六月末訴外鈴木他人が補助参加人に対し、山口市大歳地区農地委員会の承認を得て本件農地田一反二畝二九歩を期間一年の定めで賃貸したこと、翌二十五年五月二十四日同訴外人が同地区農地委員会を経由して右賃貸借契約更新拒絶許可申請をなし、同年十一月二十七日控訴人がこれに対し不許可処分をしたことは当事者間に争いのないところである。しかして、原審証人鈴木他人、田中泰一、中野優の各証言と原審における被控訴本人の供述を綜合すると、訴外鈴木他人が前記の如く補助参加人に本件農地を貸与したのは同訴外人の病疾に因り被控訴人夫婦が、これを自作することが困難となつたため一時賃貸したものであること、被控訴人は農家に育ち、幼少の頃から農事に従い、また右訴外人も農耕の経験を有し、被控訴人夫婦において牛馬こそ所有しないが、他の一応の農業器具施設を有し、且つ同訴外人の健康も回復しつつあるので、被控訴人夫婦は本件農地の返還を受け、これを耕作することが可能であること、被控訴人夫婦は二児を抱え、本件農地のほか僅々二反六畝歩位の田地を自作するのみで他にさしたる収入の途なく、その生計の困難を打開するには本件農地の返還を受け、これをも自から耕作する必要があることが認められ、この認定に反する原審証人福田鉄夫、原審並びに当審証人中野豊、当審証人中野則江、河崎助一の各証言部分は措信し難く、他に右認定を左右するに足る証拠がない。然らば、以上認定事実を彼此綜合考察すると、本件農地賃貸借契約更新拒絶理由は農地調整法第九条第一項但書中所謂「其ノ他正当ノ事由アル場合」に該当するものとするを相当とする。控訴人は農地調整法の目的に照らし、同法第九条第一項によつて農地の賃貸借契約更新拒絶を相当とするかどうかは同法施行令第一一条に則り判断すべき旨主張するが、同条は同法第九条第一項但書中「賃貸人ノ自作ヲ相当トスル場合」について考慮すべき諸事情を訓示的に規定したものと解すべきであるから、前示のように本件農地の賃貸借契約更新拒絶理由が同項但書中「其ノ他正当ノ事由アル場合」に該当するものとなす以上所論は採用の限りでない。

してみると、爾余の判断をまつまでもなく、控訴人の右不許可処分は違法たるを免れないから、これが取消を求める被控訴人の本訴請求はその理由あるものとしてこれを認容すべく、従つて右と同旨に出た原判決は相当であつて、本件控訴は理由がない。よつて、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 植山日二 宮田信夫 池田章)

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